だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「・・・でも、俺はこうして櫻井のままです・・・」
「圭子さんがあなたを育てている、ということは、圭子さんは本当に快斗を愛していたという証拠だわ」
「・・・あの。何故そんなにも、色々な事情をご存知なんでしょうか?」
「あぁ、そうね。それも、お話しないといけないわね」
ママの敬語はとても冷たく感じる。
『他人行儀』というだけなら、まだしも。
何か違う感情が渦巻いているのが分かって、背筋が冷えていく。
「実はね、快斗の弟さんとだけは交流があったのよ。
彼は、快斗のことがとても好きだったから。
柴田の家のことを押し付けてしまったのに、駆け落ちした私達のことをずっと気にかけてくれていてね。
湊が生まれた時なんて、仕事が忙しいのにプライベートジェットでイギリスから飛んできたのよ。
ただちょっと正直過ぎる人だから、うっかり圭子さんの件も口を滑らせてしまったの。
それを受け入れられるほど当時の私は大人じゃなかったから、その一件で私たちの交流は途絶。
絶望のどん底の中、救ってくれたのは湊と潤さんと遥(ハルカ)さん」
「遥さん・・・?」
「・・・私の、お母さんだよ」
そんな昔から、お父さんとママは交流があったんだ。
私達の関係はもう絡まり合って解くのが難しいくらい複雑だ。
何処にどんな糸があるかもわからない。
その糸が何処に続いているのかもわからない。
そんな中で圭都に逢えたことは。
やっぱりとても大きな意味を持つことなのだ、と理解した。