だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「命のカタチは自由だけれど、貴方が生まれたことを私は喜べないわ」
ママの声が震える。
私は、溢れる涙を止めようと必死だった。
圭都は此処にいて、他の人と何も代わらないのに。
生まれてきたことに意味はあるのに。
それでも、この人の持って生まれた境遇はあまりにも苦しいことが多すぎる。
どうして?
どうしてこの人ばかりが、こんなに重いものを背負わなければいけないの?
「受け入れられないことを、分かって・・・。快斗の子供が、家族も何もかも捨てて私を愛してくれた人の子供が他にいるなんて耐えられないわ」
「・・・」
「生まれた貴方に非はなくても、それでも貴方の存在を許せない・・・」
「・・・はい」
「どうしても快斗の子供が欲しいと、海外に足を運んでまで体外受精をした柴田の家も。全てを知っていて、それでも快斗の子供を産みたいと望んだ圭子さんも。自分たちの都合で動いた人達を、許すことなんて出来ない。私が、貴方の存在を認めるわけにはいかないわ。・・・認めたくも、ないわ」
怒りや憎しみを込めて、苦しそうに絞り出した声で告げる。
ママは涙を流しながら圭都を強く睨み続けた。
その声と表情に圭都はギュッと目を瞑った。
「そんな・・・ことって・・・」
掠れるような圭都の声は涙に濡れていて。
圭都は藻掻き苦しんでいた。
どんなに強く握り締めても、冷たくなった圭都の手が温まることはなかった。