だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「・・・どうして・・・。どうしてあなたが時雨ちゃんといるの?」
「・・・申し訳、有りません」
「湊のことも、知っているのね?」
「・・・はい。湊は俺に『兄だ』と言ってくれました」
「どうしてかしらね。一生逢うことなど無いと想っていたのに。どうして、こんなに簡単に逢えてしまうのかしら・・・」
ママはそれ以上何も言わなかった。
お父さんはママをゆっくりと宥めていた。
圭都はどうすることも出来ずに、ただ俯いて涙を流した。
私はそんな圭都に寄り添って泣いた。
悲しみが降る。
ダイニングテーブルの上の料理は、もう冷たくなってしまったというのに。
私達は動けずにそこにいた。
ただ、静かに。
圭都が私の手を離した。
その手は、自分の顔を覆って泣いていた。
私はその姿に抱きついて、一緒に泣いた。
どうすることが出来るかな。
折角、圭都と一緒に歩くことを決めたのに。
こんな気持ちのままじゃ、誰も幸せになんかなれないと想った。
誰かが悪い訳でもなく、誰かに非がある訳でもない。
それでも、どうにも出来ないことがあるだと知った。
ねぇ、湊。
どうすれば救われるかな。
どうすれば笑えるかな。
教えてよ。
ママを救って。
圭都を助けてあげて。
何の音もしないまま、涙を流す音だけがリビングに響いていた。