だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





湊のくれた『希望』。

これは、私のためだけ?

違う。

きっと、みんなのためだ。



私はそっと立ち上がる。

そして、鞄の中にしまいこんだ一通の手紙を机の上に置く。

私はもう泣いてはいなかった。

泣くよりも先にすることがあるのだ、と気付いたから。




「ママに聞いてほしいことが、あります」




私は静かに言った。

この重苦しい空気の中で、私に何が出来るわからないけれど。

私にしか出来ないことがあると、知っていた。




「・・・これは・・・?」




机の上の水色の封筒を見て、ママは震える声で呟いた。

その封筒を、すっとママに寄せる。




「その手紙は、湊からのラブレターです。日付は、二〇〇三年九月二十二日」




ママの目が私を捉える。

驚くのも無理はないだろう。




その日は、湊がいなくなる前日。

誰もが、いなくなることを知らなかった日。


私宛のラブレターは、湊の遺書になってしまった。

あの綺麗な飾り細工の箱の中に入ったまま。

八年の時が過ぎた。




笑っちゃうね、ほんとに。

一緒に笑いたかったよ。

こんな手紙を残すくらいなら、ずっと此処にいて欲しかった。


それくらいの我儘を言ってもバチは当たらないでしょ?

湊。




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