だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「湊がいなくなって、私は自分を見失いました。どうすることも出来ず、ただ過ごすだけの毎日」
苦しくて逃げ出した。
この家から。
何もかも、認めることが出来なくて。
「どんなに色んな人に逢っても、湊を忘れたことなんてなかった。今だって忘れたことなど一度もない。それくらい大切な人だから」
他の人なんていらなかった。
ただ、湊に傍にいて欲しくて。
それだけしか、なかった。
「いつも、追いかけてた。湊の背中を。湊がいる気配を探して、湊の面影を見つけては喜んだり落ち込んだりした」
雨が降る度。
懐かしい場所へ行く度。
そして――――――
「圭都は何もかもが湊に似すぎていて。湊に似ている背中とか、言葉とか。苦しかった。いつも私に湊を想い出させるから」
圭都が発する言葉は、私を過去に連れていく。
その度に想い出ばかりが広がって、湊がいないことをより明確にする。
どうしようもない切なさが、私を満たしていった。
「でも・・・嬉しかった。湊の実の弟だ、と知った時」
「・・・時雨、お前・・・」
「苦しかったけど、何度も拒んで傷つけたけど。同じ遺伝子を持って生きている圭都が、此処にいることが嬉しかった。似ているけれどまったく別人で。湊と全く別の存在である圭都が、私を救ってくれたんだよ」