だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「圭都が生まれてきた意味に、私がなります」
そう言って、私はしっかりとママを見据えた。
そんな私の顔を見て、ママは何も言えないでいた。
目の前の封筒に手を伸ばすこともなかった。
「その手紙を読みたくなったら、言って下さい。圭都とのことを認めてくれれば、その手紙を読む気持ちにもなれるでしょう。それまでは、何度でも足を運びます。私一人で、何度でも」
これは、誓い。
湊がくれた希望を、伝えるための『誓い』。
「これ以上圭都を傷つけないために、私が出来ることをします」
私は圭都の手を取った。
そして、静かに頭を下げた。
圭都も慌てて頭を下げていた。
圭都の涙は止まっていて、赤くなった目が私を見つめていた。
その目に柔らかい表情で微笑んで見せた。
沢山傷つけた分、私がこの人を守ってみせよう、と。
そう決めたから。
圭都の手を引いて、自分達のジャケットと鞄を持ち上げる。
二人分の荷物を抱えると圭都は慌ててそれを持ってくれた。
こんな時にまで紳士なんだから、と想って笑った。
「今日は帰ります。テーブルの上の食事は圭都が作ってくれたものです。食べ物を粗末にするようなことはしないで下さい」
私はそう言ってリビングの扉に手をかける。
その瞬間、圭都に手を引かれて足を止める。
手を離した圭都は、いつもの余裕の笑顔を浮かべていた。