だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
車に乗り込んで、圭都はいつものように車を走らせた。
私は、何を言ってあげることも何をしてあげることも出来ずに、ただフロントガラスの流れる景色を見つめていた。
「ありがとな」
圭都はぽつりと言った。
私は、圭都にお礼を言ってもらえるようなことは何もしていないので、そっと横顔を見つめた。
目線の先には穏やかな顔をした圭都がいた。
「母さんが、どんな気持ちで俺を産んでくれたかは分からないけど。それでも、大切にしてくれてる。それだけは知ってるから、それで十分だと想う」
「圭都・・・」
「受け止められる、なんて今は言えないけど。受け止めたいな、とは思う」
どうしたらこの人のように強くなれるだろう。
苦しいものを真っ直ぐ受け止める術を、この人は知っているのだ。
支えたい、と想った。
この人の弱さも、強さも。
「産んでくれたことに、感謝しないとな」
自分の出生が衝撃的なものであっても。
圭都は事実を事実として胸の中で受け止めていた。
そんなに簡単なことではないはずなのに、この人は『なんてことない』と強がるのだろう。
夜の光に照らされた圭都の横顔は、儚いものなんかではなかった。
確かに此処に生きている。
そんな強さが滲む横顔だった。