だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「母さんが産んでくれなければ、湊に逢うことも時雨に逢うこともなかったんだ」


「・・・そうだね」


「支えてくれる沢山の人達とも、湊の母親にまで逢えた」


「逢ったこと、後悔してない?」


「してないな。むしろ『逢えてよかった』と想ってる」


「・・・そう」


「何が起きるかわかんねぇな、生きてると。辛くて苦しいことも、山ほどあるな」


「うん」


「でも一人じゃないから、今があるって想ったよ」




ヘッドライトの光のに、静かに降る雪が照らされている。

この雪は、静かに積もって止んでいくのだろう。




「今日のことは確かにキツかったけどな」




ははは、と笑う圭都の声は沈んだ声ではなった。

無理に笑っているのがわかって、私はどうしようもなく胸が詰まった。




「でも今日のことは、俺達にとって必要なことだったんだよ」




『俺達』にとって。

圭都は嬉しそうに言った。




二人にとって今日が始まりで、二人にとって今日からが戦いだ。

まだ始まったばかり。


くじけるのは、出来ることをしてからでいい。

認めてもらうのは、時間をかけていけばいい。


そうして進んでいければいい。




「あー、でも、ごめん」


「何が?」




圭都はいつもの人をからかう時の顔をしていた。

もう元通りだ、と想って。

呆れたけれど、嬉しくなって笑った。




「結婚、遅くなりそうだなー」




確かに。

ちょっと切実かも。





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