だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「まぁ、いいよ。気長に、ね?」
そう言って、私もおどけてみた。
圭都はますます楽しそうに笑った。
車の中には楽しそうな声が響いた。
「時雨が子供生めるうちに結婚しないとなぁ」
「そうだねぇ。私も子供は欲しいよー」
「あれ、仕事頑張るんじゃなかったのか?」
「え?仕事しながら育てるよ。バリバリ」
「へー。そりゃ頼もしいなぁ。じゃあ俺、育休取りてー」
「駄目だよ!圭都にはいてもらわないと、うちの会社回らない!」
二人でそんなことを言って、また笑った。
あんな話を聞いた後で、自分たちの子供の話が出来るなんて。
この人は本当に凄いと想った。
「男の子が、いいな。湊に、良く似た」
圭都は、そんなことを言った。
この人は。
変なところで頭が悪い、と想う。
自分で言った言葉の意味に気付いていないなんて。
「湊に似てるってことは、必然的に圭都に似てるってことですけど?」
そう言うと、圭都はぽかんとしていた。
鳩が豆鉄砲でも食らったみたいに。
当たり前のように湊の名前が出てくるのは嬉しいけれど、自分の『兄』だという自覚は薄いみたいだ。
血のつながりとか、そんなもの関係なく湊が好きなんだと思うと嬉しくて。
私はまた笑った。
もういいんだよ。
私は、湊ばかりを見つめているわけではないから。
「圭都に良く似た子供が、いいな」
そう、言った。