だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「時雨さん、この後の会議資料、確認してもらえますか。今日の部署会で使うものです」


「うん、わかった。出張の成果、ちゃんと載せた?」




もちろん、と自信満々に篠木が笑う。

大人っぽさに磨きがかかって、最近では色気まで出てきたから大変。

お弁当を一緒に食べる女子社員が目の色を変えて篠木を狙っているのを聞いて驚いてしまった。


篠木はそんな『肉食』女子が苦手らしく、いつも助けを求めてくるけれど。




「部長と係長は何時戻りですか?」


「多分夕方かな?経営会議に間に合うように戻ると思うよ。それと、本人公認なんだから『水鳥さん』って呼んでいいんだよ?」


「いや・・・、もう恐れ多くって呼べないですよ・・・」




新入社員の男の子がそんなことを言うのは無理もないだろう。

水鳥さんは最近、益々綺麗になったから。

緊張してしまって恐る恐る話しかける姿は、とても微笑ましいものだ。


それに比べて。

私は相も変わらず親しみやすいらしく後輩達に懐かれている。

圭都の牽制があるせいで逃げ腰になってしまう部分もあるけれど。

そんな気を遣わせるのも可哀相で、大人げない圭都にちょっとだけお説教をしたのは、部署メンバーには内緒だ。




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