だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
忙しい企画営業部には新入社員が二人入った。
結局男性二人になって少しほっとしている。
松山や篠木が先輩ぶっているのが面白いが、これからが楽しみだ。
圭都は課長になった。
頼もしい課長は今日も元気に仕事をしている。
家では些細なことで落ち込んで、いじけた背中を見せている人物とは思えない。
逞しい背中に時折見惚れることは、まだ内緒にしている。
これが今の職場。
私達の働く場所。
私達は慌しく毎日を生きている。
「そういえば時雨さん、明日休みですよね?イベント、来ないんですか?」
「あぁ、例の化粧品のヤツね。篠木に後でデータ見せてもらうからいいよ。明日はこっちにいないから」
明日は廣瀬さんの会社の新作発表会だ。
営業担当は篠木で、全決定権を任せられている。
もう二年前になるのか。
函館での一件以来、廣瀬さんは篠木と良く仕事をしている。
二人で並ぶと外見もバツグンなので、良く二人で飲みに行くらしい。
それが原因で篠木の『肉食女子』に対する苦手意識が強くなっているのでは、とも思う。
廣瀬さんらしいけれど。
「あぁ、明日は月休日の日ですか?」
「そうよ。お兄ちゃんの墓参りに行くの。お彼岸だしね」
今では、私の家族のことをみんなが知っている。
兄がいたこと、その兄が亡くなっていることを隠すことがなくなった。