だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
以前の私は取り繕った自分だったけれど、今は圭都のおかげで大分素直になった気がする。
ただ、意地を張るのも負けず嫌いも直らないので、これは元々の性格なのだ、と気付けた。
全然嬉しくないけれど。
「今日も早めに帰るけど、何か目を通しておくものある?」
今も圭都のアシスタントとして仕事をしている。
前よりも仕事の幅は増えて大変なことも多い。
それでも、圭都の性格をよく知っているからこそ、先にしておいて欲しいことがわかるので嬉しい。
そうやって今も寄り添っている。
仕事でも、日常でも。
大切な存在になった。
「ありません。なので、ご心配なくお休みください。イベントの模様はデータでお送りします」
「ありがと、篠木。廣瀬さんにもよろしくね」
「いや、言わなくていいです。時雨さんを連れて来い、ってうるさいんですから」
「え?そうなの?この前一緒に飲みに行ったばっかりなのに」
「櫻井さんが一緒じゃ意味ないですからね、廣瀬さんにとっては」
「櫻井さんメインで飲みに誘うくせにねぇ。変な人」
「時雨さんとは、話したいことが山程あるんですよ、あの人」
「ふふふ。『あの人』扱いなんて、廣瀬さんの扱いも慣れたもんだね」
もちろん、と言ったその横顔が頼もしくて、私はとても嬉しい気持ちになった。