だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「お腹押してみるわね」




ママが私の胃に触る。

けれど、いつものような走る痛みはない。

鈍く押される感覚が胃の中の内容物を押し上げる感覚がした。




「ここ、痛い?」


「平気・・・、それより吐く・・・」




私の様子を見ていつでも吐けるように準備をしてくれた。

そのまま点滴をしてもらい個室の処置室へと運ばれた。

動くのもままならないけれど、血液検査と尿検査をすることになった。

こんな時に尿検査をするのは辛いが仕事中のママは絶対。

逆らってはいけない人だと、小さな頃から刷り込まれている。


看護師に誇りを持っているママは、仕事中とても怖いのだ。

『身内限定』で。



少し時間が経つと気分が楽になってきた。

点滴のおかげだな、と思いながら垂れ下がるチューブを見つめる。

左腕に刺さった針はママが一発で入れてくれたので全く痛くない。




「・・・さすが」




ふふふと笑い、ママが自分の『母親』であることを嬉しく思った。

寝不足のせいか最近は寝ても寝てもずっと眠い。

仕事も忙く『休んでいる暇など無い』という感じだ。


ともかく、ひとまず今は眠ろう。

目を瞑るとすぐに意識が途切れた。




< 338 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop