だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「おめでとうございます。お孫さんの誕生ですね」
女医さんの言葉を飲み込むのに、私はとても時間がかかった。
圭都も同じらしく、瞬きの回数が尋常ではないくらい増えていた。
実感が湧くわけもなく、でも無意識に私の手はお腹に当てられた。
それに重ねるように触れた圭都の手は、いつもより冷たかった。
その冷たさが現実であると教えてくれた。
「忙しいお仕事をしてるとか?今は妊娠十二週を過ぎたくらいです。もう四ヶ月目に入るのに、全然気が付かなかったんですか?」
「・・・はい。仕事で生理がず遅れることなんていつもだったので、考えもしませんでした」
「そうですか。では、尚更気をつけてください。今まで無茶をした分、体には負担がかかっているはずですから」
女医さんの言葉に、私と圭都は見つめ合った。
二人とも気が付かないなんて本当に間抜けだ。
確かに最近お腹がぽっこりしていたけれど『太ったなぁ』くらいで済ませていた。
こんなことが起こるなんて。
私の子供。
圭都と私の。
大切な月日の積み重ね。
「私、産婦人科医なのよ。ちなみに、時雨ちゃんを取り上げたのは、私」
「・・・は?」
「時雨ちゃんのお母さんの担当医、ってことになるわね」
「えぇぇっっ!?!?!?」
自分の妊娠よりも驚いた私を見て、女医さんは笑った。
その笑顔は自然と人を安心させる何かがある。