だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「子供を理解すること。大切なパートナーを理解すること。大変な道のりを理解すること。そして、それを周りに『理解してもらう』こと」
理解してもらうこと。
周りに。
「さてと、私の話はこれくらいで。あとは家族で話し合ってちょうだい」
「ありがとな、佐々木」
「いいのよ、そんなの。山本君の大切なお嬢さんですもの。・・・遥に良く似ているわ」
そう言って『佐々木』さんと呼ばれた女医さんは病室を出て行った。
最後に告げられた名前は、紛れもなく知っている名前だった。
私の『お母さん』の名前。
「時雨ちゃん」
その声にはっとする。
ママはもう笑ってはいなかった。
その目に、私も向き合わなくてはいけないのだと理解した。
「佐々木先生の言うとおり、子供を育てるのは大変なことよ。まして結婚前に子供が出来るなんて、今では当たり前でも大変なことなのよ」
「うん・・・わかってる」
「子供の父親は、圭都さん、よね?」
「そう。それは間違いないよ」
「・・・わかったわ。私はその子育てを手伝うことは出来ないわ」
「・・・ママ」
「それでも、産みたいの?」
ママの声は本気だった。
私が子供を産んでもママは助けてくれないのだ、と。
本気でそう想っているということが、ひしひしと伝わってきた。