だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
不安はもちろん、ある。
でも不思議と心は落ち着いていた。
圭都の手に力が入る。
自分のせいだ、と。
また考えているんだろう。
そんな考えは無駄だよ。
二人で決めたじゃない。
『三人で生きる』と。
何があっても。
「ママ、私は産むよ」
迷いのない声が病室に響いた。
ママは私を見つめたままだった。
「圭都とは、いつ結婚してもいいと想ってた。本当は、ママにわかって欲しかったけど。それが叶わなくても、私に宿る命を無くすわけにはいないの」
だって、これは『希望』。
湊との誓い。
圭都との約束。
「愛してるの。私と圭都の間に宿ってくれた、この子を」
愛してるの。
命があることを。
私のもとに、宿ってくれたことを。
「命は輪廻を繰り返す、って。ママが教えてくれたんだよ」
「時雨ちゃん・・・」
「儚く短い命も、こうしてまた宿る。此処にいるのはね、ママ。私と圭都の子供だけれど、湊の遺伝子も受け継いでいるんだよ」
「・・・」
「そのことが、嬉しくてたまらないの。そして、この気持ちを分け合える人がいることも」
涙が頬を伝っていく。
圭都が、私のその涙をそっと拭ってくれた。
しなやかな指に涙をすくわれながら圭都を見つめた。
圭都も泣いていた。