だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「時雨。予定日は『九月二十三日』よ」


「そんな、ことって・・・」




私の目から、見る見るうちに涙があふれ出た。



三人は一斉に笑った。

幸せな空間が私を包んだ。



こんな風に泣けるなんて、想わなかった。

こんな場所に辿り着けるなんて、想わなかった。




湊。

『最後に行き着く場所』という意味を持っている、貴方の名前。




乗り越えたものはあまりに辛く、心が折れてしまいそうだった。

それを、みんなが抱えている。




だから、こんなにも眩しい。

こんなにも暖かく。

こんなにも幸せなんだ、と想う。




その日、お母さんと一緒に湊の手紙を読んだ。

いつも持ち歩いていたそれは皺など一つもなく、見つけたあの日のままだった。




今日まで、私を見守り続けてくれた。




二年前の、あの日。

圭都と二人で湊の残したものを探した、あの日。

湊の部屋にあった飾り箱を探し当てた。

蓋を開けた箱の中には沢山の写真が入っていた。


其処に入っていた写真は、特別だった。

ただ私だけが写っている写真ばかり。

小さな頃から二十歳になった時までずっと、私だけを見つめていた写真だった。

其処にあったのは、湊がずっと見つめていてくれた証だった。



その写真と共に大切なものが入っていた。

湊からの『ラブレター』。





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