だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
『時雨へ。
ごめんね、時雨。
俺はきっと、もう長く傍にはいられない。
そう、わかってしまったんだ。
この手紙を見つけた時は、俺がもう隣にはいない時だろう。
本当はすぐに見つけられて『何コレ』とからかって欲しいけど、そうもいかないだろうから。
だから、この手紙を見つけた時。
隣に立っているのは、俺の弟であって欲しいと想う。
俺には『圭都』という弟がいるんだ。
異母兄弟だけど、とても似ているんだよ?
アイツにはいつも時雨の話をしていてね。
興味津々で話を聞いてくるんだ。
逢ったこともない時雨に、まるで恋をしているかのように。
アイツは、真っ直ぐで、不器用で。
本当にイイヤツだから。
時雨も、きっと好きになる。
もしかしたら、俺のことを想う以上に。
いや、それはないか。
っていうか、それはダメだ。
俺が嫌だ。(笑)
圭都の出生の秘密は知っている。
実はこっそり、圭都の母親を問い詰めたことがあってね。
圭都には言ってないけど。
受け入れがたい事実であることに間違いはなくて、みんなが傷付くことだと思うから。
どんなに受け入れがたい事実でも、いつか受け入れられる時がくるよ。
どんなことがあっても。
だって圭都は、俺の大切な『弟』だから。
きっと大丈夫だよ。
もしも圭都のことで母さんと何かあった時、時雨はとても悩むんだろうな。
母さんの気持ちや圭都の気持ちを考えて。
そんなことしなくていい。
無駄だから。
いつも想ってた。
自分の想う通りにいて欲しい、と。
誰かのために何が出来るか、じゃない。
『自分のため』にしたいことを考えて、生きて。