だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
俺は時雨を甘やかすのが好きだった。
笑いかけてくれる顔が、嬉しそうな声が。
優しく温かい手が、何よりもかけがえのないものなんだ。
倒れて入院をして、感じた。
『大切なものが、いつもそこにあるわけではない』と。
いつ一緒にいられなくなるかわからない。
だから、こうして時雨に手紙を書いてる。
本当に遺書になったら笑って欲しい。
そうならないことを、願わずにはいられないけど。
そうなってしまう予感も、同時に感じているから。
時雨に逢って、初めて生まれた感情がある。
『いとしい』と。
沢山の人に出逢い、沢山の人と関った。
そして、沢山の人が愛してくれた・・・気がする。
あんまり・・・自信ないけど。
でも『時雨しかいらない』とさえ想った。
俺の色のない生活は、時雨に出逢った瞬間に色付いたんだ。
雨が上がる、あの美しい瞬間のように。
世界が輝いたんだ。
こんなことを言うのは、柄じゃないね。
でも、言わせて。
俺の世界は、時雨が全てだった。
誰よりも時雨が幸せであるように。
それが、俺の願いだ。
俺がもし、一緒にいられなくなったなら。
違う『たった一人』を見つけて。
そして、幸せになって。
いつも傍にいて、時雨の幸せを願ってる。
忘れないで、時雨。
愛してる。
2003.9.22 湊』