だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
『こんなに、時間がかかるもんなんですか?』
『そうねぇ。こればっかりは個人差だから。圭都君がじたばたしても仕方がないわね』
『それにしても、長くないか?もっと、こう。ぽーん、って・・・』
『潤さん。ぽーん、ってなるなら誰もがそうします。落ち着ついてください。お医者さんなんですから』
『あぁ、時雨!頑張れよ!!』
『圭都君、ここ病院だから。それも私と潤さんの。恥ずかしいから止めてね』
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病室に戻ってゆっくりとベッドに横たわっていた時、お母さんが分娩室の前での会話を教えてくれた。
そわそわする圭都も、落ち着き払ったフリをしているお父さんも目に浮かんで、私は思わず笑った。
目の前には、恥ずかしそうに赤ちゃんを抱き締める圭都がいる。
生まれたばかりでまだ真っ赤なお猿さんのような顔だけれど、顔立ちが圭都に良く似てる。
私の子供でもあるはずなのに、その要素が見つからないことがとても悔しかった。
二〇一三年九月二十四日。
午前十一時十九分。
体重、三五二〇グラム。
私は、元気な男の子を出産した。
初孫にうきうきしている両親と、すでに親バカ全開の旦那様に囲まれて。
とても幸せだった。