だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「ノゾム。希望の『望』でノゾム」
櫻井望
(サクライノゾム)。
それは、大切な約束。
湊がくれた『希望』をこの子にあげたかった。
「・・・いい名前だな」
圭都はそう言ってくれた。
そして、望に向かって笑いかけていた。
どこか寂しそうな横顔で。
「まだ、難しくても。いつかお母さんと圭子さんを会わせることが出来るよ」
そっと、圭都に告げる。
お母さんと圭子さんは、まだ和解することが出来ていなかった。
圭子さんがいつも負い目を感じているのか、自分から身を引くばかりだ。
結婚式も、今も。
初めての孫にであるこの子に、会いたくないわけがないのに。
私達は、ここから会わせてあげたいのに。
「母さんも強情だからな」
「大丈夫よ。だって私達には『希望』があるわ。そのための名前だから」
きっと、望がそのわだかまりをなくしてくれる。
そう遠くない未来に。
そんな予感がしてる。
いや、確信している。
「時雨・・・。そうだな。きっと、そうなる。なぁ、望」
圭都が語りかけると、ふあぁと大きなあくびをして応えた。
私達は、それを見て笑った。
窓の外には、抜けるような青空が広がっていた。