だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
――――ピッ、ピッ、ピッ、ポーン。
一月、一日、午前零時、丁度をお知らせ致します――――
「今年も湊にとって素敵な一年になりますように」
湊に抱きついて耳元で囁いた。
それと同時に強く抱き締められて息が苦しくなった。
その腕の強さが、たまらなくいとしかった。
「今年もよろしく。今、この瞬間。時雨の一番近くにいられて本当に嬉しい」
――――――今、この瞬間――――――
湊が忘れているわけがない、と想った。
だからクリスマスよりも今日だったのだ。
この日が来るたび湊はとても嬉しそうだった。
私を見つめてにっこりと笑う顔。
その顔が、今年はこんなに近くにある。
誰にも咎められることもなく。
「今年もまた綺麗になったね」
「・・・そんなの、湊のひいき目じゃない」
「違うよ。毎年綺麗になる。表情もしぐさも、時雨の全てが」
一番近くで見ていて。
この人の隣で綺麗になりたい、と想う。
湊がいることで私が変わっていく。
湊の存在が私の存在をより鮮明にする。
目を見つめて笑いかける。
湊の目に映る自分が誰よりも綺麗に映るように願いながら、そのままキスをした。