だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「松山、お前は休め。現場に来るのはオフでも来れるだろう」
珍しく森川が強めの口調で言った。
そんな森川を思わず見つめてしまった。
「大丈夫ですよ。俺だって森川さんの現場見てみたいっすよ・・・」
「そんなのこれからいくらでもあるだろう。今回は俺一人で大丈夫だ」
きっぱりと言った森川に反論できず、松山は少ししゅんとしていた。
なんだか可哀相だな、と思って森川に目配せをする。
そうすると小さく首を横に振った。
何やら事情がありそうだ。
「篠木はどうするの?年末」
「特別仕事も入らないと思うので、ゆっくりさせてもらいます」
「実家へは?」
「まだ考え中です。帰る気分になったら適当に」
そう、と言って自分のマグカップに手を伸ばす。
冷めてしまったココアは口の中に甘いものが残る。
これもココアの醍醐味だな、と思って少し嬉しくなった。
「時雨さんは、年末どうするんですか?」
「そうだねぇ・・・」
そういえば何も決めていなかった。
今なら実家に帰ることも出来るだろう。
あの、懐かしい場所へ。