だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「準備は?」
「問題ないです。後は、最終チェックをするだけです」
「そうか。クライアントは?」
「今は売り場チェックに行って出払ってます。待ちますか?」
「いや、いい。俺たちは見学だからな。人ごみの中で見させてもらうよ」
圭都の言葉に森川は小さく頷いた。
休みなく働いている森川を見ていると、今のんびりしていることが申し訳なく思えてきた。
「森川、何か手伝う?」
「別になんてことないだろ。もっと大変な時だってあったんだ、気にするな」
心配そうに言った私に、森川は笑ってくれた。
じっと私の目を見ていた森川は、ふっと笑って資料に目を戻した。
圭都といくつか確認をして、後は自分一人で大丈夫です、と言った。
森川の顔が少し引き締まる。
また頼もしくなったな、と思う。
「じゃあ、後は頼んだぞ」
「わかりました。今年はゆっくりと年越しを過ごしてください」
その言葉に、櫻井さんはゆっくりと笑った。
「頼もしくなったもんだ」
誇らしげに聴こえたその声は、とても嬉しそうな声だった。