だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「別に構わないさ。仕事をしてる時も普段のときも。俺のほうが明らかにイイ男だからな」
自信満々の声にそっと目線を向ける。
意地の悪い顔ではなく、優しさの滲み出る顔で。
本当に綺麗な顔をしているということは、それだけで狡い。
何を言われても『この人が素敵だ』と言ってしまいそうになる顔をしている。
「お前の前では、カッコイイままでいたいんだよ」
そう言ってそっと右手を引かれた。
出口の近くは人が少なく、ビジョンの正面から離れているのでとても歩きやすかった。
スタッフパスを片手で取り、自分のジャケットのポケットに入れる。
繋がれた手は冷たいはずなのに、お互いの体温が心地よかった。
「圭都さん、どこに行くんですか?」
私の手を引いて人ごみとは別の方に歩いて行く。
手を引かれながら舞い散る雪がちらちらと私たちに降り注ぐ。
降っては止んでを繰り返す。
もう雨ではない。
この土地ならではの粉雪が降る。
「人ごみで見るのは疲れるだろう?俺が嫌だから部屋取った」
部屋?
・・・部屋って!!??