だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「向かいのタワーからなら見えるだろう?その方が身体も楽だしな」
簡単に言っているけれど、ホテルの予約は三ヶ月前から取らなければ難しいはずだった。
いつの間にそんなことをしていたのだろう、と圭都を見つめていた。
「一緒に過ごせる気がしてたんだ」
この人は。
こんなにも同じような人が世の中にはいるのか、と想ってしまう。
血の繋がりだけでなく、性格までもが似ている。
それほど近い存在なのだ、と実感するばかりだ。
「本当に、そっくりです」
無意識にそんなことを言っていた。
ふっと笑う声が聴こえて私の手を引く力を強めた。
隣に並べ、と言うように。
「そうだろう。だからお前の傍にいる」
そんな風に簡単に言わないで欲しかった。
想い出して、その度に目の前のこの人に重ねている。
「いいじゃないか。二人で湊を抱えて生きてるんだから」
気にしない、と言うこの人を。
救ってあげることは出来るのだろうか、といつも考える。
どうすることが一番いいのかわからないまま、手を引かれてホテルへ向かった。