だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「湊と一緒にいたのは、何年?」
目線を私に戻して、圭都は優しい顔で言った。
「・・・十六年。四歳から、二十歳まで」
言葉にすると、とても長い時間のような気がする。
十六年。
そんなに傍にいてくれたんだ、と想う。
でも、たった、とも。
「ってことは、俺と時雨が出逢ってから四年、その四倍か。手ごわいな」
どこか楽しそうに圭都が笑った。
その声に私も笑えてきた。
「手ごわい、でしょ?」
あぁ、と言って手に持っているシャンパンを口に含む。
私も自分のシャンパンを飲み込む。
氷で冷やされたシャンパンは、グラスも中身も冷たくなっていた。
その冷たさがシャンパンをとても美味しくしていた。
「俺と湊が過ごしたのは、七年。それでも、時雨が過ごした時間の半分以下なんだな」
十分に長い時間だと想った。
離れ離れに暮らしていたお互いが、何かの因果で廻り合って七年。
どこか他人で、どこか家族で。
兄であり友人。
よき理解者であった湊。
その頃の二人に逢いたいと想った。