だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「やっぱり、その頃の二人に逢いたかったです」
少し落ち着いた涙を自分の指で拭いながら、そう言った。
それを見て圭都は困ったように笑った。
「俺は、逢わなくて良かったと想ってる」
圭都は目を逸らして、雪の降る空を見ていた。
ちらつく雪は結晶まで見えそうなほど透き通っていた。
「だって、その頃に逢っていたら。益々敵わないって想ってただろうから」
敵わない。
圭都が最初に言った、言葉。
「湊の隣にいるお前の顔を知ったら。向けられている視線を見てしまったら。俺は、今みたいに想いを伝えることすら出来なかったんだろうな、って」
想いを伝えることすら。
そんな風に想うほど。
私はまだ湊を追いかけて見えるのだろうか。
「時雨が、どれだけ湊を大切にしてたのか。湊がいなくても、痛いくらいにわかる」
一番近くで見ている人。
今、大切にしたい人。
その人を苦しめているのは、私自身なのだと実感する。
「だから、お前の二十八年目を俺にくれよ」
この人は知っている。
また涙が零れた。