だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





『「この世に生まれてきてくれて、ありがとう」』





強く抱き締められた腕に、更に力が入る。


その腕の強さとその言葉に。

此処が『今』なのだと知る。


湊と同じ言葉をくれる圭都がいる、『今』なのだと。



私は精一杯振り向いて圭都の顔を覗き込んだ。

涙で滲んで、目の前のこの人がどんな顔をしているのか。

はっきりとわからないことが、とても悔しかった。




「・・・知って、たの?」




一月一日。

山本時雨。

二十八歳。



ついに、湊の年齢を追い越した。

私がこの世に生まれた日。



こんな風に雪が降ったり止んだりを繰り返していた。

湊と同じ声が、今。

聴こえた。




「どうしても一緒にいたかった。二十八歳の時雨を、一番最初に見たかった」




圭都の声がする。

目の前にいるのは、今、此処に生きている人。




櫻井圭都。

その人。




傷つけてばかりで。

甘えてばかりで。

湊と、重ねてばかりで。



それでもどこか違うことも感じながら、今一番大切にしたい人。



ごめんなさい。

上手に大切に出来なくて。




ごめんなさい。

言葉もぬくもりも上手に分けてあげることが出来なくて。




それでも。




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