だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「まだ何にも決めてない。とりあえず年越しは大型ビジョン見に行こうかな。森川ってば、映像見せてくれないんだもん」
「あれはまだ非公開だからな。編集前の風景は見せてやったろ?」
朝焼けのオレンジ。
薄く白くぼやけた光。
湖の湖面の中島。
涙が出るくらい、綺麗だった。
「編集したものは今、先方の手元にあるからな。データはあるけど当日のお楽しみだ」
嬉しそうに笑う森川の顔が、今回の仕事の達成感を物語っている。
とても自信があるに違いない。
その顔を見ると、当日でもいいか、という気分になってしまう。
「楽しみにしてるよ、自信作」
あぁ、と小さく笑った森川を見て席を立つ。
飲みきったココアのマグカップを洗いに行かなくては、と思って給湯室に向かう。
目線を森川に向けると、なんだか物欲しそうな顔をしていたので首を傾げて問いかける。
そして何が欲しいのか思い当たるものがあったので、笑って頷く。
森川は満足そうに笑っていた。
甘いものが欲しくなった時、森川は目線だけで訴えてくる。
犬じゃないんだから言葉で言えばいいのに。
そんなところも憎めないのが、森川の可愛さだった。