だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「今も、湊を想い出してる」
そっと圭都に呟く。
びくりと腕が震える。
その腕に、そっと手を乗せて引く。
正面で向かい合って伝えたくて。
「でも、此処にいるのが貴方で嬉しい」
結局、泣いてばかり。
でも笑える。
泣いたままでも、笑える。
それを教えてくれた人。
「こんな私のままで、いい?」
そっと圭都の頬に触れる。
驚くほど冷たいその頬に、自分の右手を寄せる。
大切にその顔を撫でていた。
「圭都を大切に出来ない、私のままでも、いい?」
重ねた姿にいつも苦しくなる。
それでも、圭都も大切。
どうしよもない、自分の気持ち。
忘れられないよ。
でも、貴方には此処にいて欲しい。
こんな我が儘が許されるなら、せめてこの距離を縮めさせて。
目の前にある、このぬくもりに。
手を伸ばすのは間違っていないかな。
本当は触れたくて。
もっと近付きたくて。
けれど、近付けばもっと傷つけることもわかっていて。
どうしようもなかった。
でも。
もう、どうすることも出来ない。