だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「・・・抱いて、欲しいの・・・」
私が言葉を口にした瞬間、圭都は私を抱き締めた。
震える腕が私を包む。
圭都の腕の中はとても暖かかった。
「・・・お前の誕生日に、俺がプレゼントをもらうのか?」
耳元の声が掠れている。
その声がいとしくて、自分の手でこの人を抱き締める。
それは湊を抱き締めているようで。
でも、全く違う人なのだ、と想う。
この感覚が私の気持ちを変えていく。
前に進める、と想う。
「私はもう貰ったから。素敵なプレゼントを」
静かに告げる。
どうかこの人を幸せに出来ますように、と。
「どんな私も受け止めてくれる。そんな大切な人を、もらったの」
回した腕にありったけの力を込めた。
この人を大切にしたくてたまらない。
湊と同じように、大切にしたくてたまらない。
同じように、忘れられない人にしたくてたまらない。
「誰よりも傍にきて、私を抱き締めて」
もう一度、言った。
そのまま圭都は、私の言葉を奪ってしまった。
貪るような激しさではなく、慈しむような優しさで。
それは、触れてはいけないものに触れるように。