だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「時雨、手をよけて」
顔の上に乗せた手を掴まれる。
強引さではなく優しい力で。
そっとキスをして、私の手を少しずつ持ち上げる。
圭都の息がかかるたび、眩暈で意識を失いそうだった。
「もっと近付きたいんだ。時雨の一番近くまで」
そんな声で言わないで。
抵抗なんて出来なくなってしまうから。
近くにいたいよ。
傍にきてよ。
でも、恥ずかしさで意識が飛んでしまいそう。
抗うことなく、圭都に掴まれた腕を顔から外す。
すぐ近くにある圭都の瞳と見つめ合った。
焦らすように触れられる圭都の手に、私の吐息ばかりが漏れている。
幸せそうに笑う圭都が、目の前にいる。
「俺だけを見てればいい」
その言葉に捕まってしまった。
溢れるばかり。
声も。
息も。
想いも。
涙も。
圭都が動くたび、それに合わせて身体が反応する。
敏感になった私の身体は、熱が籠って仕方がなかった。
触れる部分から圭都の気持ちが染み込むようで、息も苦しい。
もう、限界だよ。