だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「――――っ。圭都・・・、好き・・・っ」
精一杯の言葉に、圭都は強引にキスをくれた。
言葉をくれるかわりに。
もう限界だ、と私に伝えるように。
見たこともない切ない顔が、必死に私を見つめている。
少し歪んだ圭都の顔が私の心をえぐる。
圭都の息がかかる。
「――――ッッ――――」
外は粉雪が舞い降りる。
白い雪は、音もなくこの街に降る。
降っては止み。
止んでは降る。
それを幾度も繰り返しながら。
外の寒さとは裏腹に、この腕の中は二人の熱が責め立てる。
近付きすぎた距離が切なくさせる。
目が合う度キスをして。
時折歪むその顔を、腕を伸ばして抱き締める。
「――――時雨――――」
聴こえた声は、似ているけれど違う声。
今、はっきりわかる。
圭都のほうが少しだけ声が低いんだ。
それに、私を呼ぶ声に余裕がない。
抱き締める腕の力がとても強くて。
キスだけが、信じられないほど優しかった。
圭都への想いが溢れる瞬間、私は圭都にしがみついた。
言葉が落ちずキスをした。
その柔らかさと、必死にしがみついた背中の感覚ばかりが私に残っていた。