だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「降っては止み、止んでは降る。その雪を『時雨』というんだ」
しぐれ。
私の名前。
「腕の中に時雨がいて、景色の中にもあって。眠るのがもったいなかったんだ」
私の名前で溢れている空間。
この時期は雪ばかり。
だから湊は、雪を雨の名前に置き換えて呼ぶ。
それは、雨としてみるよりも儚く、そして美しいもののような気がした。
「時雨は終わりがない。繰り返されて、続いていくから」
確かにその通りだと思った。
雪が降る。
けれど必ず止んで、また降る。
それを繰り返すからこそ、この大地は潤いを続けることが出来るだろう。
「時雨の名前は、ずっと続くことを表してるみたいだ」
「そうなのかな」
「僕は、そう想うよ。永遠の象徴みたいだ」
永遠の象徴。
湊がそう呼んでくれれば、それは永遠になる。
ずっと続く約束になる。
「嬉しい。ずっと繰り返して。私が湊を好きで、湊が私を好きなこと」
その言葉に二人で見つめ合って笑う。
疑うことなく、ずっと続いていくのだと想っていた。
湊の腕の中は不安など一つもなかった。