だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
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気が付くと目の前の窓では空が色づき始めていた。
南の空の端の方が、白とも黄色味がかったオレンジとも薄いピンクとも言えない色で。
ホテルの布団は薄くてあまり好きではない。
なんだか寂しくて、いつも寒い感じがしてしまう。
けれど。
今は服も着ず眠っているのに、とても暖かい。
かけられた布団と私を後ろから抱いている腕。
少し動くたびに触れる足の温度や、背中のぬくもり。
いつもは冷たい手のひらが、何の温度差もなく私のお腹に当てられている。
規則正しい呼吸の音が耳元でしていた。
私の首筋に埋められた顔。
柔らかい髪が動くたび、言葉に出来ない感情が押し寄せてきた。
その度に抱えられている腕を握り締めた。
不思議な感覚だった。
今までも一緒に眠ったことは何度もある。
誰よりも近くにいたはずだった。
触れ合ったことがなくても、誰よりも近い存在だったはずなのだ。
でも今は、それよりもずっと近くに圭都を感じる。
触れ合うことがどれだけ特別なことなのか。
そんな簡単なことを想い出した。
寂しさを埋めるためではなく。
何かを紛らわすためではなく。
純粋にそのぬくもりが欲しかったのだ、と。