だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
給湯室でマグカップを洗いながら、さっきの森川の口調を思い出していた。
どうして松山にあんな風に言ったのだろう。
本人が仕事をしたい、と思うなら別にさせてあげてもいいような気がしていた。
冷凍庫のドアを開けて、中にあるチョコレートを取り出す。
少しだけ甘めのチョコレートを選んで小さなお皿に乗せた。
ここにはあまり使われない小さなお皿が何枚も用意されていた。
「ついでにコーヒーも」
入り口に寄りかかるように立っている森川が、私に向かって言った。
今日はあまり疲れているようには見えないのだけれど、甘いものが欲しいということはちょっと煮詰まっているのだろう。
「了解。ちょっと待ってて」
森川のマグカップを棚から取り出してコーヒーを作る。
インスタントの粉で作るコーヒーは、最初に少しのお湯で混ぜてあげると香りが増す。
前に違う部署の先輩が教えてくれた。
コーヒーにお湯を入れて、森川に渡す。
私は洗ったマグカップを拭きながら、やっぱり何か飲もうかな、と考えていた。