だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それは、俺の台詞のような気がするけどな」
じっと見つめたまま動かずに、圭都は言った。
柔らかな髪。
綺麗な顔。
長い睫毛。
色素の薄いガラス玉のような瞳。
今、此処にあることをじっと確かめていた。
湊に良く似た、湊の弟。
同じ痛みを知っている人。
「傍にいることがこんなに嬉しい」
噛み締めるように言った声は、私の胸を苦しくさせた。
いとしさが込み上がる。
幸せに満たされる。
「三人で、生きていこう」
「三人で・・・?」
「湊と、俺と、時雨で。」
あぁ。
こんなにも。
同じ気持ちでいれくれるなんて。
生きているんだ。
湊は、ずっと。
私の中で色褪せることなく輝く。
ぼんやりとしていく輪郭が切ない。
遠のいていく声が切ない。
けれど、生きている。
そして、圭都の中にも。
受け止めてくれた優しさが。
支えてくれた強さが。
先に逝ってしまった儚さが。
生きているんだ。
だから、圭都と一緒に生きていける。
そう想った。