だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





紅茶のティーパックをカップに入れてお湯を注ぐ。

蓋をして少し蒸らしている間に、森川にチョコレートを差し出した。


嬉しそうにそれを受け取った森川を見て、疑問に思っていたことを聞いてみることにした。




「森川。なんで、さっき松山にあんな言い方したの?本人がいいなら別に仕事してもいいじゃない」




私がそう言うと、一口コーヒーを啜って目線を下に向けた。

何か考えているような顔。

言いづらいことでも聞いてしまったのか、と少し申し訳ない気持ちになった。




「この前、松山と飯食いに行ったんだ。その時ボソッと『疲れますねぇ』って言っててさ。どうやら彼女がらみらしいんだ」




そういえば、前にも同じ事を言っていたのを思い出した。

彼女がわかってくれない、と悩んでいた松山。




「上手くいってないの?」


「らしいな。で、いよいよ別れ話まで発展してるみたいなんだ。詳しくは言わないけど」




彼女の不安はもう限界まできているのかもしれない。

うちの部署は忙しい時期が重なることも多く、しかも人数が少ないのでハードだ。


同じ仕事をしているならまだしも。

この仕事を知らない人からしてみれば、理解などできるものではない。



忙しさと同じだけの、やりがいがあることもわからないだろう。




< 7 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop