だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
紅茶のティーパックをカップに入れてお湯を注ぐ。
蓋をして少し蒸らしている間に、森川にチョコレートを差し出した。
嬉しそうにそれを受け取った森川を見て、疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「森川。なんで、さっき松山にあんな言い方したの?本人がいいなら別に仕事してもいいじゃない」
私がそう言うと、一口コーヒーを啜って目線を下に向けた。
何か考えているような顔。
言いづらいことでも聞いてしまったのか、と少し申し訳ない気持ちになった。
「この前、松山と飯食いに行ったんだ。その時ボソッと『疲れますねぇ』って言っててさ。どうやら彼女がらみらしいんだ」
そういえば、前にも同じ事を言っていたのを思い出した。
彼女がわかってくれない、と悩んでいた松山。
「上手くいってないの?」
「らしいな。で、いよいよ別れ話まで発展してるみたいなんだ。詳しくは言わないけど」
彼女の不安はもう限界まできているのかもしれない。
うちの部署は忙しい時期が重なることも多く、しかも人数が少ないのでハードだ。
同じ仕事をしているならまだしも。
この仕事を知らない人からしてみれば、理解などできるものではない。
忙しさと同じだけの、やりがいがあることもわからないだろう。