だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「笑うなよ」


「珍しく弱音を吐いてるな、と思って」




少し不満げなその声は拗ねているようにも感じた。

別に弱音ではないが、少し愚痴っぽい口調にはなっている。

そのことに自分で気が付いたのか、ふうと小さく息を吐いた。




「元旦に戻んねぇかな」




心底想っているという声が、なんだか私を恥ずかしくさせた。

視線を合わせるのも気が引けて、真っ直ぐ前を向いていた。




「今だってほとんど一緒にいるじゃないですか」




前にも増して、私たちは一緒にいる時間が増えた。

今では『圭都の家に住んでいる』と言っても過言ではないほど、傍にいる。



今まで圭都にしてきたことを少しでも埋めたい、と想っていた。

そして今まで耐えてきた分、圭都は私に対して我慢をしなくなったようにも感じる。


私しか知らない圭都が増えるたびに、なんだか温かい気持ちになれた。

激しさではなく穏やかさ。


縋るように伸ばした手を、なんの躊躇もなく掴んでくれているのだ、と。

今は強く感じている。




それは、湊がいなくなってから初めて感じる感覚だった。




< 70 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop