だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「笑うなよ」
「珍しく弱音を吐いてるな、と思って」
少し不満げなその声は拗ねているようにも感じた。
別に弱音ではないが、少し愚痴っぽい口調にはなっている。
そのことに自分で気が付いたのか、ふうと小さく息を吐いた。
「元旦に戻んねぇかな」
心底想っているという声が、なんだか私を恥ずかしくさせた。
視線を合わせるのも気が引けて、真っ直ぐ前を向いていた。
「今だってほとんど一緒にいるじゃないですか」
前にも増して、私たちは一緒にいる時間が増えた。
今では『圭都の家に住んでいる』と言っても過言ではないほど、傍にいる。
今まで圭都にしてきたことを少しでも埋めたい、と想っていた。
そして今まで耐えてきた分、圭都は私に対して我慢をしなくなったようにも感じる。
私しか知らない圭都が増えるたびに、なんだか温かい気持ちになれた。
激しさではなく穏やかさ。
縋るように伸ばした手を、なんの躊躇もなく掴んでくれているのだ、と。
今は強く感じている。
それは、湊がいなくなってから初めて感じる感覚だった。