だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それもそうだな。あんまり贅沢言ってると、仕事が出来なくなりそうだ」
「それは困ります!しっかりしてもらわないと、うちの部署が回らないです!」
思い切り大きな声で反論をしてしまった。
驚いた顔のままこちらを向いている圭都と目が合う。
気付いた時には、もう遅かった。
やってしまった、と思って思わず顔を逸らした。
「・・・ッハハハッ!!」
圭都は弾かれたように笑い出し、そのまま私の前を歩き出した。
笑いを堪えながら肩が揺れている。
ぽかんとその背中を見つめていると、そっと振り向いた。
「お前、やっぱり仕事バカだよな」
嬉しそうに笑いながらも、にやりとした意地の悪い顔をしていた。
「仕事には影響させない。その代わり、頑張って乗り切ったら俺にご褒美な」
楽しそうにそう言って空気の澄んだ空を見つめた。
その背中に並ぶように私は少し早足で歩いた。
ご褒美は何をあげたらいいんだろう、と考えながら。
私が何かぼんやり考えているのに気が付いて、圭都は顔を覗き込んできた。
その顔がやけに近くて、私は思い切り視線を逸らしてしまった。