だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「そんな反応するな。何もしないさ、ここでは」




『ここでは』

その言葉を強調するように、しっかりと私に向けて言った。




「ここでは、ですか?」




言葉を繰り返すだけの返答だったはずなのに、何かを期待したような物言いになってしまった。


自分で言った言葉のはずなのに、やけに現実感がない。

なんだか恥ずかしくなって不自然に目を逸らしてしまった。




「ここでは、だ」




意地の悪い声だと思う。

それでいて、幸せを含んだ声だと思う。




「今日はきっと遅くなる。だから、一緒に帰ろう」




さりげなく放つその言葉の節々に。

今までにはなかった感情が見え隠れするようになった。

仕事の間はお互いのことをきちんとわきまえている。



それなのに。

やっぱり傍で仕事を出来るのが嬉しい、と。

圭都の気配が言っている。



そのことが、今は私にとっての日常であり安心感なのだと想う。

でも、まだ秘密にしておこうと想った。

元旦以降、あまりに調子に乗っている圭都を見て悔しい気持ちになっているのも事実だった。




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