だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「じゃあ午後のアポの時に、今後の展開内容を確認しよう。資料は?」


「業界の傾向をまとめた参考資料と、うちの広告が掲載されている雑誌を持参してます」


「了解。今日長い会話をするのは得策じゃない。仕事の話はそこそこに、世間話をしてすぐ出よう」


「わかりました。それと――――」




前よりも仕事はしやすくなったと思う。

認めてもらおうと思うことで、仕事に対して熱意を持つことが出来た。


それに、『私でなくては出来ないこと』も増えてきた気がする。


例えば、圭都の資料のクセを見つけて分かりやすくすること。

森川のプレゼンデータのまとめ方。

松山の資料作成の指摘、篠木の慎重さの後押し。



煮詰まっているタイミングや、欲しいものがわかるようになってきた。

それは、自分の仕事だけをこなしていた時よりも周りを見ている証拠だと思った。



どうすれば仕事がしやすくなるのか。

そんな簡単なことを、いつもより少しだけ助けてあげるだけでいいのだとわかった。



今までのように『居場所がない』と思うことが少なくなった。

それはやはり、圭都のおかげなのかもしれないと思っている。


この人と一緒にいることで、自分は地に足のついた状態になれたのだと想う。




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