だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
肩を並べて仕事をすることがとても勉強になる。
この人の頭の中は綺麗に整理がされていて、私の言葉をすぐに飲み込んでしまうのだ。
いつもの顔と私しか知らない顔が交差するたび、私にしか出来ないことが増えている気がする。
それは、いい意味で『心を許している』証拠のようで嬉しかった。
「お前、何か変わったな」
一通りの確認を終えた後、ぼそりと圭都が言った。
そっと目を向けると、ぼんやりと吊り広告を見つめたまま私のほうを見てはいなかった。
「前よりも地に足が着いてる感じがするな」
自分でもそう想う。
湊の影を追いかけてばかりの時は、いつもふわふわとしていた。
誰かの言葉に揺れたり自分の気持ちが揺らいでばかりいた。
けれど、それと向き合えと。
圭都が背中を押してくれた。
私が嫌がるのも厭わずに。
多少強引ではあったけれど、私には必要なことだったのだ。
そして、いつも支えてくれた。
折れそうな心を。
倒れそうな身体を。
前を向けない想い出を。
この人が教えてくれた。
『生きていく』という事を。