だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
残業...ザンギョウ
結局、挨拶回りを終えて会社に戻ったのは十九時を過ぎていた。
一日中歩き回っていたせいで、ブーツから社内用のパンプスに履き替えると少しキツく感じた。
社内の人はかなりまばらで、クライアントとの新年会や挨拶回りから戻ってない人も多いようだった。
うちの部署も、私と圭都以外は直帰の予定になっている。
「ちょっと給湯室行ってきます。何かいりますか?」
「いや、俺はいいや」
了解です、と小さく応えてオフィスを出る。
足がパンパンで社内履きのパンプスとむくんだ足が少し恥ずかしい気がした。
地下鉄と徒歩で回った挨拶回りは一日で六件にもなっていた。
時間に追われながら歩き回っていたので、足の疲れに気が付いたのは会社に戻ってからだった。
最後の一件は御堂会長との打ち合わせだった。
久しぶりにお会いした会長は相変わらずの貫禄で、身の引き締まる思いだった。
顔を合わせて挨拶をすると『顔つきがとても良くなったわね』と言われた。
以前よりも仕事に自信を持てたこと。
そのことが、滲み出ていたのかもしれない。
私は会長のその言葉にとても嬉しくなって、それと同時に今の自分を認めてもらえた気がした。