だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
給湯室でココアを作っている間、少しでも痛くなった足を何とかしようとしていた。
曲げたり伸ばしたり。
スカートスーツなのもお構いなしに、疲れた足を動かしていた。
「パンツだけは見せるなよ」
入り口から聴こえて来た声に慌ててストレッチをやめた。
けれど、その声の主に気が付いてほっと息を吐く。
「櫻井さんじゃないですか。もう、驚かせないで下さいよ」
「俺じゃなかったらどうするんだよ。あんまり気を抜くな」
よくわからない理由だけれど、確かにすっかり気を抜いていた。
女性社員ばかりが来る場所ではないので、ちょっとだけ反省をして見せた。
「そうですよね、すみません。場所も考えずに」
しゅんとしている私を見て、そっと近付いてくる。
優しく私を見つめるその視線におずおずと目線を上げた。
「今日は大分連れまわしたからな。足、疲れただろう」
そう言って頭をぽんと撫でられる。
今までと同じようで、今までとは違う触り方で。
優しいその手にほっとして、ゆっくりと笑ってみせた。