だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「大丈夫ですよ。それに、御堂会長に褒められてやる気出ましたから」
私の言葉に反応して優しい笑い声が聴こえた。
目が合うとどちらからともなく笑顔になる。
こんな些細なことが今の私たちには支えになっているのだろう。
「それは何よりだ。この後さっきの打ち合わせのまとめ、手伝ってくれるか?」
「了解しました。他部署用の資料は?」
「それも作らないとな」
やることは次から次へと増えていく。
けれど、今はそれが充実している証拠なのだと思える。
電子レンジの機械音が響いたので、温かいココアを取り出した。
これから長くなる仕事をするために必要なものだ。
「いい匂いだな」
隣で圭都が言う。
甘いものはあまり得意じゃないくせに、こういう匂いは好きなのだ。
一口啜って喉に流し込む。
温かいココアは気持ちを優しくしてくれ気がする。
「飲みますか?多分、甘くて文句を言うと思いますけど」
私の飲む甘さのココアは前に一度飲んで『甘すぎる』と文句を言われたことがある。
その時は、勝手に飲んで文句を言うな、と大声で反論したんだっけ。