だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「松山はそういうのを適当にするヤツじゃないさ。だから、せめて年末くらい一緒にいてやれ、って言ったんだけどな」
口下手な森川がここまで言うということは、よほど心配をしている証拠なのだろう。
感情を上手に伝えられないだけで。
不器用な同僚を見て、なんだか笑えてきた。
「なんで笑う?」
怪訝な顔をしながら私の方へ少し近付いてくる。
大きな影が目の前にあるので、少し見上げて森川の顔を見た。
「口下手な森川にしては頑張ったな、と思って。心配してるって、ストレートに言ってあげればいいのに」
回りくどい言い方ではきっと後輩たちには伝わりづらいだろう。
本人は少し首をかしげて、うーん、と考えていた。
「なんか、昔の自分を見てるみたいで嫌だと思ったんだ。心配は、するさ」
森川は、前の彼女と別れる時にとても悩んでいた。
結婚をするか、別れるか。
正反対の結論の中で揺れていた。
そんなもの簡単に選べるものじゃないのに。
大切にしていることを上手く伝えられなかった自分が悪い、と非道く責めていたのを思い出す。