だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「――――ッ――――!」
軽く触れるだけのキスをして圭都がにやりと笑う。
私は動揺してカップを落としてしまいそうだというのに。
確かに人は少なくなったとはいえ、給湯室はいつ誰が来るのかわからない。
「ちょっ!!!・・・こんなところで!!」
「やっぱりお前の飲むココアは甘い。俺にコーヒー持ってきて」
そう言うと、何事もなかったかのように給湯室を後にした。
電子レンジの前でまだ熱いくらいのマグカップを持ったまま、私は立ち尽くしていた。
あんなに子供っぽい顔をされたら怒るに怒れないじゃない。
無邪気に楽しんでいる圭都を見て、腹立たしいやら可愛いやら。
色々な感情が混ざるのを止められなかった。
「もう。しょうがないんだから」
そう言いながら私は小さく笑っていた。
不意に見せる子供のような顔が、今はなんだか嬉しく思う。
厳しい上司の顔ではなく、社内恋愛を楽しんでいるただの男の人の顔だと知っているからだろう。
恋人らしいやり取りが増えるたび、二人だけの想い出が増えていく。
それは二人の時間が確実に積み重なっている証のようで、私の心を温かくさせた。