だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
動転...ドウテン
「遅かったな」
席で圭都にコーヒーを渡す。
目線をこちらに向けて圭都が私に語りかける。
目の奥で語りかけるその目が、心配だと伝えてくれた。
「丁度お湯がなくなりそうだったので。ポット洗ってたら時間がかかりました」
にっこりと笑って応える。
さっきまでの動揺を上手く隠さなくては、と想って。
そんなことをしても圭都に心配をかけるだけなのはわかっていた。
でも。
今の揺れている気持ちをそのまま伝えることなんて、出来るわけがなかった。
「そうか」
私を見つめたままそっとコーヒーを啜る。
その目が私を追い詰めてしまいそうで、私は口元に笑みを浮かべたままパソコンの方を向いた。
まずはやりかけの資料を仕上げることに集中し、隣から感じる視線に反応しないままでいた。
時折会話を交わす度に圭都が探るように私を見つめると、思わず弱音を吐いてしまいそうになる。
それを振り切るように、必死に仕事を片付けていった。
目の前の仕事に打ち込んでいる間は、杉本さんの言葉を想い出さずにいられたから。